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透析効率

透析効率 spKt/V

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昔はよくお世話になった、おそらくもっとも有名な透析指標spKt/Vについておさらいの意味で色々まとめてみようかと思います。

spKt/Vとは?

透析効率の基本中の基本?高血流・長時間透析へシフトしている昨今においては、spKt/Vは高くて当たり前となってきたため、あまり参考にしていない施設が増えてきています。この値を算出するにあたっては、以下の2式が使用されます。
1.新里の式(日本透析医学会推奨)
2.Daugirdasの式(世界的に使われている)
両者の値は近似するため、どっち使っても問題ないっちゃ問題ないと思います。そもそも後で述べるように個人の状況によるところが大きいため、個人的に患者同士の比較に使ってはいけないと思っています。

spKt/Vの定義

この指標のパラメータを一つずつ見ていきましょう。
sp:Single Poolの略称。人間の体液分布は血管内、細胞間質、細胞内と分かれており、実際この3箇所で溶質濃度や浸透圧などの違いがあると言われていますが、これを一つのプール(ばけつみたいなもの)にたとえて、人間の体液は均一であると仮定することを言う。(1-compartment model)
K:尿素のクリアランス
t:透析時間
V:体液量

Kt/Vは所謂数式のため、Kt/Vを上げるためには
1.尿素クリアランスを上げる
2.透析時間を延ばす
3.体液量を減らす(現実的ではないですが)
と考えることができます。

※クリアランスとは老廃物(溶質)が透析液中に移動することによってきれいになった血液の量を表す概念(今度クリアランスについても書こうと思います)
血流250ml/min程度であると今メインで採用されているダイアライザのクリアランスは240台後半まで出ているため、ダイアライザの膜面積を上げるなどの対応ではクリアランスは上がりません=Kt/vは変わりません。(Kt/vを上げるために膜面積を上げるといった勘違いが散見されますのでとりあえず)
あ、低分子蛋白のクリアランスは間違いなく上がりますので、意味がないとは言ってませんのであしからず。

Daugirdasの式

Kt/V = −ln( Ce/Cs−0.008・td )+(4−3.5・Ce/Cs)・ΔBW/BW


Cs:透析前BUN、Ce :透析後BUN、td :透析時間 (hr)
ΔBW :透析中の体重減少量、BW :透析後体重

Kt/Vと死亡リスク

少し古いデータにはなりますが、2009年の年末統計調査「我が国の慢性透析療法の現況」にKt/vと死亡リスクのデータがありましたので、紹介します。

我が国の慢性透析療法の現況2009 一部改変

Kt/Vが低いほうが死亡リスクは有意に上がり、Kt/vが上がるにつれて死亡リスクが下がることがわかると思います。また、日本透析医学会の維持血液透析ガイドラインには以下のように記載されています。

ステートメント
透析量は,尿素の single-pool Kt/Vurea(spKt/V)を用いることを推奨する.(1B)
透析量は,月 1 回以上の定期的な測定を推奨する.
実測透析量として,以下の値を採用する.
最低確保すべき透析量として,spKt/V 1.2 を推奨する.(1B)
目標透析量としては,spKt/V 1.4 以上が望ましい.(2B)
透析時間は,4 時間以上を推奨する.(1B)
補足 *本ステートメントは,週 3 回,1 回 6 時間未満の維持血液透析患者を対象とする.


日本透析医学会.維持血液透析ガイドライン:血液透析処方 P597

spKt/Vの問題点

この指標は1回の透析効率の指標であるため、極論を言えば
1.週1回4時間
2.週3回4時間
以上の条件で血流や体液量が同等の患者のKt/Vはほぼ同じ値に収束してしまいます。
また、高齢患者は体液量が少なくなる傾向にあるため、Kt/vは大きい値が出てしまいます。
同じ体格であれば女性のほうが体液量が多いので、Kt/Vは低めに出る傾向があります。

体液量に大きく左右されるため、患者同士の比較には何の意味も見いだせない(あくまで個人的感想です!)
1日の透析効率を評価するより、長期的な評価をすべきだと思ってます。その点ではHDPのような単純な指標のほうがより実用的だと考えます。

spKt/Vとうまく付き合うには

上記で私にとってネガティブイメージの強いKt/Vですが、1患者のKt/Vの経過をたどると、シャントの評価(実血流、実クリアランスの増減少)に気づくことができると考えています。実際臨床で再循環所見をKt/Vから発見することも少なくありません。
Kt/Vを上げることでアミノ酸除去量なども増えてしまい、結果として低栄養状態を惹起する、悪化させることがありますので注意が必要です。nPCR,GNRI,BMI,%CGRなどを用い、栄養や運動の評価をした上でKt/Vの評価をすることが、絶対必要です。これらの指標に関しても今後私見を書いていく予定です。

spKt/Vまとめ

栄養状態をしっかり把握してから透析条件の変更を行えるよう、さまざまなパラメータを総合的に見る知識を蓄えましょう。
低栄養状態の患者に高効率な透析を施すことは、患者さんのためにはなりません。それは医療者のエゴそのものです。

  • この記事を書いた人

koch

CE Worksのkochです。全国の透析患者のみなさんや医療従事者のみなさんに、誰が見ても理解できる内容に拘って情報をお届けできるよう努力しています。 また、在宅透析支援も行っています。在宅透析の導入~管理まで、支援する環境が整っておりますので、お話だけでもさせて頂ければ幸いです。

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