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透析一般

透析における浸透圧の考え方

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水の移動を司る圧力、浸透圧について紹介していきます。単純に見えてとても奥が深い理論ですので、透析従事者の方々はしっかり理解して患者さんのケアに当たりましょう。分かりやすくするために体液をdouble-pool model で考えていこうと思います。

double-pool model

人間の体液を2区画とみなしたモデル。ここでは血中と細胞内(細胞内液と細胞間質液を総称する)に分けて説明します。
飲食して血中の溶質濃度や浸透圧が変動すると、血漿と細胞内で溶質や水の移動が起こり、ある程度の時間が経つと移動が完了し、平衡状態に達すると考えてください。

平静状態だと血漿と細胞内は平衡状態

浸透圧とは

腹膜透析の原理で用いられている浸透圧による水の移動。水は浸透圧の低いほうから高いほうへ移動する(下図)
(記事作成時反対に書いていました。申し訳ございません。読者様ありがとうございました。修正済みです)

血液透析における除水は浸透圧ではなく血液側圧力>透析液圧の状態を作り出し、圧力の高いほうから低いほうへ水を移動させている。(限外濾過)

 

不均衡症候群

透析導入時によくみられる頭痛や吐き気などを伴う不均衡症候群は、血清浸透圧が下がり脳内浸透圧が高い状態となるため、脳内に水が移動し一過性の脳浮腫を起こすことが原因となっている。

血中の毒素が除去されることで、血漿と細胞内において水の移動が起こり細胞内液が増量

浸透圧の種類

浸透圧には血清浸透圧と膠質浸透圧が存在する。透析前や透析液の検査では浸透圧=血清浸透圧として測定している。

血清浸透圧

血中の浸透圧物質で規定される。Na濃度とBUN,グルコースを用いて以下のように簡単に計算することができる
血清浸透圧 = 2 × Na + Glu / 18 + BUN / 2.8  (基準値280~300 mosm/L)
Na濃度 140mEq/L Glu 150mg/dL BUN 70mg/dLの透析患者さんの場合、313 mosm/Lとなり、体にたまった浸透圧物質により透析前数値は基準値に比べ高めであることがほとんど。

膠質浸透圧

別名コロイド浸透圧。
主にアルブミンが関与する浸透圧。アルブミンには水を保持する能力があり、除水を進めても血圧が下がらない要因は、この膠質浸透圧により細胞内から血管内への水の引き込み(Plasma Re-filling プラズマリフィリング)があり、血管内の水分量が保たれているからこそである。

プラズマリフィリング

アルブミンは文献にもよりますが1g当たり15~25mLの水を保持する能力があります。
アルブミンの基準値は3.5~5.5g/dLのため、体重60kgの患者さんにおいては184gのアルブミンが血中に存在します。(血液量を体重の8% Alb値4g/dLで計算)
通常の透析療法では、対象のアルブミンロスはあるものの、膠質浸透圧はほとんど変わらないため、除水が進んでも細胞内からのプラズマリフィリングにより血中の水分量はある程度保たれます。そのため、血圧が維持され、ドライウェイトまで達することが可能となります。
では栄養状態が悪く、アルブミンが下がっている患者さんの場合を考えてみましょう。
アルブミンが下がっている⇒膠質浸透圧が下がっている患者さんでは、血管内に水分の保持が出来ず、浮腫・溢水所見が見られ、「痩せた」と判断されドライウェイトを下げられてしまいます。
しかし、アルブミンが下がっているため、除水を行おうとしてもプラズマリフィリングが除水速度に追い付かなくなり、血圧が下がってしまって除水ができない状態となるのです。

低栄養患者の血圧低下機序

浮腫・溢水所見があったとき、その原因が本当に「痩せた」からなのか、低栄養からのものなのかを判断せずにドライウェイトを下げることは非常に危険なことです。低栄養であった場合、その原因検索が必要になります。

リフィリングを把握し安全な透析を

プラズマリフィリングの速度(リフィリングレート)は患者さんによって違います。またその日の体液の増量加減によっても違います。
患者さんおよび医療従事者の長年の経験から、この患者さんはこのくらいの除水速度なら大丈夫だろう、という予測のもと除水を行っているかと思います。
ほとんどの場合はそれでうまくいくと思いますが、リフィリングの把握をすることで、より安全な透析に努めるべきと思います。
透析中のモニタリングでBlood Volume測定(循環血液量)可能な透析機器が多数存在します。

除水が進むごとに徐々に循環血液量が下がっていき、循環血液量の減少率がある程度のところで血圧が下がる、といったことがモニタリングできます。ドライウェイトの評価やシャントの再循環の評価にも使うことができ、非常に素晴らしい機能となっています。患者個々の循環血液量の減少率を把握することで、個々に合った除水プログラムが可能となります。搭載機種をお使いの方でBlood Volumeを活用していない方おられたら、ぜひ使ってみてください。
除水による血圧低下でお困りの患者さん、病院でBlood Volumeが測定できないか確認してください。もしかしたらつらい除水が楽になる道が見つかるかもしれません。

素晴らしい機能なんですが、各社オプションなんですよねぇ・・・標準搭載してくださいメーカーさん。

  • この記事を書いた人

koch

CE Worksのkochです。全国の透析患者のみなさんや医療従事者のみなさんに、誰が見ても理解できる内容に拘って情報をお届けできるよう努力しています。 また、在宅透析支援も行っています。在宅透析の導入~管理まで、支援する環境が整っておりますので、お話だけでもさせて頂ければ幸いです。

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