臨床工学技士による血液透析業務支援。透析効率や栄養、在宅血液透析など透析にかかわる様々なことを発信していきます。訪問看護の立ち上げもご相談ください。

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透析一般

透析室の感染対策について

更新日:

透析室では、複数の患者さんが同時に血液浄化治療を行うため、血液暴露のリスクが高く、感染症の血液伝播の可能性が比較的高い環境と言えます。また、感染症が死因の2位になるほど易感染間者さんが多い環境です。ここではスタンダードプリコーションを透析に絡めて紹介しようと思います。

スタンダードプリコーション

スタンダードプリコーション(標準予防策)とは、患者の血液体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液 等すべての体液)、分泌物(汗は除く、排泄物,あるいは傷のある皮膚や、粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで,患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策のこと。
これは感染症の有無に関わらず全ての患者さんに適用されるものです。

手指消毒

全ての医療行為の基本となり、感染症に対して一番大きな役割を果たす。
手指消毒(手洗い)には以下の種類があり、衛生学的手洗いについて透析医療では最も気をつけねばならない部分となります。

日常的手洗い

目的:汚れおよび一過性微生物の除去
方法:石鹸あるいは界面活性剤を用いて10~15秒以上洗浄
必要な場面:検温や血圧測定前後 配膳前 排泄後 手袋を外した時 清掃後等

衛生学的手洗い

目的:一過性微生物の除去あるいは常在菌の除去,殺菌
方法:抗菌性の石鹸、界面活性剤、アルコールベースの擦式手指消毒薬のいずれかを用いて10~15秒以上手指をこすり洗いする
必要な場面:下記参照

手術時手洗い

一過性微生物の除去と殺菌および常在菌を著しく減少させ抑制効果を持続させる
透析室の感染対策とは一線を画するため割愛します

透析における衛生学的手洗い

全部徹底できている病院・スタッフは正直いないと思います。私も徹底できていません。

患者さんに触れる前

バイタル測定時(血圧脈拍体温等)

清潔操作をする前

侵襲的処置の前(透析における穿刺~透析スタート 回収時)創傷処置 注射等 手袋をする前など

体液曝露リスクの後

検体採取及び処理後 創傷被覆に触れた後 嘔吐物処理後 手袋を外した後など

患者に接触した後

検温や血圧測定 移動や介助の後 処置後に次の患者さんへ移動する前など

患者さんの環境に触れた後

リネン交換の後 ベッドサイドの清掃後など

個人防護具

手袋・マスク・ゴーグル・プラスティックエプロンなどがこれに当たります。

手袋

患者さんに使用する手袋は患者さん毎に交換する、同一患者でも異なる部位の処置をするときは交換する、これは基本中の基本です。

また、手袋を外した際は手指消毒が必要となります。ですが時間に追われていたりすると、患者さんから別の患者さんに移動するときに手袋だけ交換して手洗いは抜いてしまうということが透析医療においてよく見られる光景です。意識して手指消毒を行うようにしていきましょう。

手袋が必要な場面

1.穿刺~透析開始操作 回収など血液に触れる可能性がある時
2.体液に触れる可能性がある時
3.正常でない皮膚・粘膜に触れる可能性がある時
4.吸引時
5.接触感染予防策患者(MRSAなど)の処置時など
6.排泄介助時や処理時
7.使用後の器材の片付けや洗浄時など

手袋着用が不適切な場面

1.バイタル測定時(血圧脈拍体温等)
2.カルテ記入時
3.経口薬配布時
4.配膳下膳など

マスク

血液や体液の飛散から鼻・口を防御したり、着用者の唾液など飛沫に含まれる微生物をまき散らさないよう、普段からマスク着用を心がける必要があります。
しかしマスクの常時着用に関しては下記の問題点があります。
1.体液飛散などで汚染したマスクがほかの患者のケアで使用される
2.汚染したマスクのままスタッフステーションなどでの勤務が行われる
3.鼻だしや顎だしなど不適切な使用が見られることがある
汚染されたマスクを触ってしまうことで、ウイルスの伝播などが懸念されるため、使用後はすぐに廃棄する必要があります。

ゴーグル

目に血液や体液などが飛散する可能性のある処置を行う場合に必要となります。
穿刺~透析開始時は特に血液曝露のリスクが高いため、なるべくゴーグルや眼鏡の着用をすることが望まれます。

プラスティックエプロン

血液や体液が飛散したり跳ね返りなどの可能性がある場合に必要となります。ゴーグルと同じく穿刺操作時には血液飛散リスクが高いため、着用することが望まれます。

私が感じる透析における感染対策の問題点

透析医療は血液曝露のリスクが高いことは皆さんご承知のことと思います。

そのためスタッフは最新の注意を払って各作業を行う必要がありますが、慣れや油断から手袋なしで処置をしてしまったりということがよく起こります。

患者さんの穿刺~透析開始操作をした後、次の患者さんに行くときに手洗いは間違いなく出来ていますか?次の患者さんが待っているからといって手洗いをパスしてしまっては、スタンダードプリコーションの意味がありません。

一呼吸置く意味でも、作業と作業の間に手指消毒を挟むことで、余裕のある業務が行えるのではないかと思います。

他の患者さんの回収などをしながら、隣の患者さんの血圧測定マンシェット外したりしていませんか?

回収時の手袋、血液や体液ついているかもしれませんよ?隣の患者さんに触るのはNGなんです。マンシェット外したいなら手袋外してください。

並びで回収入っているときにスタッフのみなさん、よく外してくれるんですけど本当はやめてほしいんですよね。マンシェット外すの遅れても何も起きませんよ。

でも患者さんにほかの患者さんの体液や血液付けてしまったら大問題ですよ。私が患者さんの立場だったら炎上させます。

これだけはみんな読んでください⇒血液が飛んできても気づかない!?

ルミノール反応を使った血液飛散状況の研究がありましたので引用します。


【方法】透析開始時、透析終了時に使用した手袋・ガウン・フェースシールドを回収し血液飛散状況を調査する。コンソール周辺環境の血液汚染を調査する。
【結果】手袋は100%の血液汚染がみられた。ガウンとフェースシールドは血液飛散の自覚が無いスタッフが多いが、実際にはルミノール反応陽性が認められた。

日本透析医学会学術集会抄録アーカイブ2016年より

この結果恐ろしくないですか?

血液飛散の自覚無く、フェースシールドが血液汚染されたってことは、フェースシールドがなければ目に入っていたかもしれないということなんです。患者さんが感染症に罹患していたら、無自覚に感染が成立してしまう可能性があったわけです。

また、どんなに丁寧に手技を行っても手袋は血液汚染してしまうという結果、これも興味深いですね。やっぱり回収時に隣の患者さんのマンシェット外すのはダメなんです。(結局これが言いたい)

感染対策まとめ

手指消毒と手袋のタイミング、皆さん今一度再確認しましょう。

全国には手袋を全くしない施設もあると聞きます。透析施設におけるスタンダードな感染対策をもっと話し合っていかないといけないですね。
感染対策に積極的ではないご施設様、感染事故が起こったらどうしますか?

特に透析針の安全針化(ロック機構)は急務だと思いますよ。感染を未然に防ぐ手段を講じていない場合、下のような裁判を起こされてしまうこともあります。コストUPにはなりますが、医療従事者の安全をもう一度考え直してみませんか?

1999年3月針刺し損傷によってHCV感染したのは病院側が十分な指導をしなかったからだとして病院を経営する医療法人を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は病院側に約2740万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

日本醫事新報No.3954(2000.2.5)

 

  • この記事を書いた人

koch

CE Worksのkochです。全国の透析患者のみなさんや医療従事者のみなさんに、誰が見ても理解できる内容に拘って情報をお届けできるよう努力しています。 また、在宅透析支援も行っています。在宅透析の導入~管理まで、支援する環境が整っておりますので、お話だけでもさせて頂ければ幸いです。

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